熟年離婚後の一人暮らしで生活費はいくら必要?

離婚できるのは嬉しいけど、生活費どうしよう…

熟年離婚後の一人暮らしを快適に送るために、まずは生活費の確保が重要です。

この記事がおすすめの人
  • 熟年離婚を控えている
  • 生活費、住まい、介護など、一人暮らしの将来が不安
  • 離婚で得られるお金や出ていくお金を理解しておきたい

そこで本記事では、離婚後の生活費はいくら必要なのか、また生活費に困らないためにはどのような準備をすればいいのかを解説します。

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熟年離婚後の一人暮らしに必要な生活費は月16万円

総務省が2022年におこなった調査によると、単身世帯の年間の消費支出額は194万1,038円でした。月に換算すると、16万1753円が必要という計算になります。仮に50歳で離婚し、再婚をせずに平均寿命まで生きると仮定すると、必要な生活費は以下の通りです。

〜男性の場合〜
男性の平均寿命は81歳なので、残りの人生は「81歳ー50歳=31年」。
194万1,038円×31年=6017万2178円が必要。

〜女性の場合〜
女性の平均寿命は87歳なので、残りの人生は「87歳ー50歳=37年」。
194万1,038円×37年=7181万8406円が必要。

ただし、こちらはあくまで平均値を基にした概算であり、生活スタイルや節約スキルなどにより、必要な生活費は変わります。また食費や医療費、住居費などの状況により、実際の支出額が変わる可能性があります。

参考:家計調査(e-Stat)

熟年離婚の際に生活費に回せる6つのお金

熟年離婚後の一人暮らしの生活費をすべて自力でまかなわなければいけないのかというと、そうではありません。そこでこちらでは、熟年離婚の際に得られる6つのお金を紹介します。

財産分与

財産分与は慰謝料と混同されがちですが、結婚生活で夫婦が協力して築いた財産を公平に分配するための制度であり、慰謝料とは異なります。

専業主婦である妻でも、夫が働ける環境を整え、家庭に貢献しているため、財産分与を受ける権利があるのがポイントです。

基本的には財産を半々に分けるのが原則ですが、一方の寄与が著しく大きい場合は、6:4や7:3といった調整がなされることもあります。

また、財産分与が不十分で離婚後に妻が経済的に困窮する恐れがある場合、扶養的な意味合いとして、毎月一定額の支払いを取り決めるケースもあります。

なお、財産分与の対象となる財産は、結婚期間中に得た

  • 預貯金
  • 不動産
  • 退職金
  • 保険解約返戻金

などです。一方で、別居期間中に得た財産は分与の対象にならないので注意が必要です。

財産分与の方法としては、不動産や車の売却金を分ける、退職金を結婚期間に該当する年数で分配する、保険の解約返戻金を計算して分ける、などが考えられます。

住宅ローンのような負債については、分与の際に不動産価値からローン分を差し引いて計算するなど、各ケースに応じた方法で計算されます。

離婚後の生活に不安を抱える方には、財産分与の準備だけでなく、生活再建のための総合的なサポートが必要です。アセンスでは、こうした不安を抱える方に寄り添い、経済面を含む生活全般の問題に関する相談に対応しています。

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引用:アセンス

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慰謝料

慰謝料とは、離婚の原因が夫婦のどちらか一方にあり、その行為が違法な権利侵害と判断される場合に、精神的な苦痛に対する補償として請求できる金銭です。慰謝料の相場は以下の通りです。

原因慰謝料の相場
不貞行為100~300万円
DV・モラハラ50~300万円
悪意の遺棄(家庭にお金を入れない、理由のない別居など)50~300万円

ただし、この相場はあくまで目安であり、ケースによって高くなることもあれば、低くなることもあります。

慰謝料は原則として、相手との交渉によって金額を決定できますが、話し合いが難航した場合は、裁判所で調停や訴訟を通じて金額を決定することになります。

裁判所で争う場合、離婚の慰謝料を請求する理由と、それを裏付けるための証拠が必要となるので注意しましょう。慰謝料を巡って対立しそうな場合は、適切な記録や証拠を確保しておくことをオススメします。

不貞行為など、証拠が見つかっていない場合は専門家に調査依頼をしてみてください。

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年金分割

年金分割は、結婚期間中に支払われた厚生年金の一部を、離婚後に元配偶者から受け取れるようにする制度です。結婚していた期間に元配偶者が支払っていた厚生年金の一部を受けとれます。年金分割の方法は以下の2つです。

  • 合意分割

夫婦の話し合いで分割割合を決定する方法で、双方が同意しない場合は年金分割調停がおこなわれます。

  • 3号分割

専業主婦など扶養されていた3号被保険者が、夫の同意を得ずに厚生年金の半分を受け取ることができる制度です。2008年4月以降に積み立てた年金分が対象となり、それ以前の期間は合意分割で解決する必要があります。

ただし、離婚成立後に相手が死亡し、1ヶ月を経過した場合は3号分割の請求ができなくなるので注意が必要です。

離婚で年金分割を検討する場合や、損失のリスクについて不安がある場合は、弁護士事務所や年金相談センターでアドバイスを受けるのが良いでしょう。

参考:離婚時の年金分割について(日本年金機構)

婚姻費用

婚姻費用とは、夫婦の一方が家計に十分なお金を入れていなかったり、別居していたりする場合に、収入の少ない配偶者や子供を育てている配偶者が、相手に対して生活費や家賃などの支払いを求めることができるものです。ただし、婚姻費用の請求には以下のような点に注意が必要です。

婚姻生活の破綻:夫婦関係が事実上破綻し、婚姻生活の実態がないと判断される場合、婚姻費用の請求ができないことがあります。

手続きの難しさ:婚姻費用の請求には高いハードルがあり、手続きが簡単ではないのが現実です。必要な場合は、法律専門家の助けを借りて進めるのが効果的です。

養育費

未成年のお子さんがいる場合、親権者は非親権者に対して養育費の支払いを求めることができます。親権をどちらにするかは、協議離婚や調停離婚の場合、双方の合意で決定できますが、訴訟や審判になると裁判所が判断します。

一般的に、妻が親権を得るケースが多いため、その場合は夫が妻に対して養育費を支払うことが多いです。養育費には、子供の成人までに必要な食費、学費、医療費などが含まれます。

なお、養育費の金額は一律に定められているわけではなく、相手との話し合いか、裁判所が公表している「養育費算定表」を目安に決定するのが一般的です。

厚生労働省の2016年『全国ひとり親世帯等調査の結果』によれば、養育費の平均は月額3~4万円とされています。

ただし、途中で支払いが途絶えるなど、養育費の未払いは問題となりがちです。離婚後に養育費の支払いが期待できなくなる可能性もあるため、滞った場合の法的措置について、書面で取り決めておくことが重要です。

持ち家の売却益

熟年離婚の場合、持ち家を所有している夫婦では、その売却益が重要な資金源となります。持ち家の売却益も財産分与の対象であり、夫婦双方が築いた資産として適切に分配されます。ただし、売却益の分配には以下の点に注意が必要です。

  • 住宅ローンの残高

住宅ローンが残っている場合、その残高を売却益から差し引いた上で分配がおこなわれます。
そのため、ローン残高が少ない場合は売却益が大きな金額になりますが、逆に残高が多い場合は売却益では返済しきれないこともあります。

  • 所有権の割合

持ち家の所有権の割合が夫婦で異なる場合、その比率に応じて分配します。

  • 家族構成と居住の継続

子供がいる場合や、配偶者の一方が持ち家に引き続き住むケースでは、相手に一定の補償金を支払うか、所有権を一部譲渡するなどの対応が必要になることもあります。

  • 売れやすい時期を見極める

不動産市場には繁忙期と閑散期があります。特に3月は転勤や進学などの理由で新年度に向けて住み替え需要が高まり、物件がよく売れる時期です。
一方、1月や8月は取引が少なく、閑散期とされています。このタイミングを見計らって売りに出すことで、より高い価格での売却が期待できます。

  • 築年数の影響を理解しておく

物件の売れ行きには、立地や建物の造りに加えて、築年数も重要な要素です。
一般的に不動産業界では築25年以内の物件は売れやすい傾向にあるため、できるだけ早めの売却が有利です。

  • 仲介手数料が発生する

不動産を売却する際に発生する仲介手数料は、買主を見つけた不動産会社への報酬です。
手数料の上限は取引価格に応じて以下のように決められています。

200万円以下:取引価格の5%以内(+消費税)
200万円~400万円以下:取引価格の4%+2万円以内(+消費税)
400万円以上:取引価格の3%+6万円以内(+消費税)

例えば、取引価格が1,000万円の場合、仲介手数料は「1,000万円 × 3% + 6万円」で、合計36万円(税別)となります。

  • 譲渡所得税が発生する

物件を購入時より高く売却した場合、その差額に対して譲渡所得税が課されます。
譲渡所得税は物件の所有期間によって異なる税率が適用されます。詳しくは以下の通りです。

長期譲渡所得(所有期間が5年超):所得税15%、住民税5%
短期譲渡所得(所有期間が5年以下):所得税30%、住民税9%

物件を売却する際は、税金についても考慮に入れて計画を立てることが重要です。

このように、持ち家の売却にはさまざまな注意点があるため、不動産会社と相談して適切なタイミングで売却を進めましょう。

もし持ち家の売却を検討しているのであれば、まずは売却価格の相場を知ることが最初の一歩です。全国売買仲介取扱件数37年連続No.1、2ヶ月以内の売却成功率約65%の『三井のリハウス』で無料査定をしてみてください。

熟年離婚の際に出ていくお金

熟年離婚後の一人暮らしの生活費を考える際は、同時に出ていくお金も把握しておく必要があります。こちらでは、離婚のパターンごとに出ていくお金の相場を紹介します。

協議離婚の場合

協議離婚は、お互いの合意で離婚条件を決定し、離婚届を提出するだけで成立する一般的な離婚方法です。この方法であれば、弁護士を介して手続きをする必要がないため、基本的に費用は発生しません。

調停離婚の場合

調停離婚は、家庭裁判所で調停委員の仲介を得て話し合う方法で、手数料が3,000~5,000円程度かかります。調停離婚に関しても、必ずしも弁護士が必要ではありませんが、依頼する場合は50万〜100万程度の費用が発生します。

離婚裁判の場合

調停で条件が決まらない場合、離婚訴訟を申し立てるか、もう一度協議離婚に挑戦する選択肢があります。

離婚訴訟の場合、手数料は2万円程度ですが、相手側も弁護士を立ててくる可能性があるため、弁護士に依頼することが一般的です。この際の弁護士費用は60~100万円程度かかることがあります。

熟年離婚後の一人暮らしで生活費に困らないための準備

最後に、熟年離婚後の一人暮らしで生活費に困らないために、5つの準備方法を解説します。

生活設計をしておく

まずは具体的な生活設計について考えることが最重要です。具体的な金額を把握するため、年金相談センターで離婚後に受け取れる年金額を算出してもらうとよいでしょう。

また年金だけでなく、その他の収入も見込んだうえで、離婚後の生活に必要な資金をしっかり計画しておくことが大切です。年金や財産分与などで損をしたくないという方は、弁護士に相談の上、計画的に進めることをオススメします。

仕事を見つけておく

離婚後の生活費に困らないために、離婚前から仕事を見つけておくことは重要です。特に年齢が上がるほど就職できる仕事が限られるため、早めに準備を進めることが必要です。

専業主婦で職歴に自信がない場合は、パートなどの簡単な仕事から始めて、徐々に勤務日数を増やして慣れていくこといいでしょう。

熟年離婚後に働く場合、年金の支給は通常65歳からですが、60歳で退職して繰り上げ受給する人もいます。

65歳以降の繰り下げ受給を選択すれば、受給開始を遅らせた分だけ月あたり0.7%の増加が見込まれます。したがって、何歳で年金を受け取るかを計画し、その年まで働くことが重要です。

参考:老齢年金の繰下げ受給を希望している方へのお知らせ(日本年金機構)

住まいを考えておく

高齢者が賃貸物件に住む際に問題となるのが年齢制限です。十分な収入が見込めない可能性や、事故や孤独死のリスクなどが懸念され、60歳〜65歳を過ぎると、賃貸物件を借りにくくなります。

だからこそ、熟年離婚の際はどのように自分の住まいを確保するか、現実的なプランを立てておくことが重要です。主なプランは以下の4つです。

財産分与で自宅をもらう

財産分与の際に自宅をもらえば、住み慣れた家にそのまま住み続けられます。ただし、固定資産税や管理費、維持費が必要だったり、地震保険などの加入が必要だったりなどデメリットもあります。

場合によっては住宅ローンの支払いが続くこともあるので注意が必要です。また、自宅がある場合、売却しない限り生活保護などを受給できないことも注意しておきましょう。

また、自宅がある場合、売却しない限り生活保護などを受給できないことも注意しておきましょう。

実家に帰る

実家が健在であれば、実家に移り住むのも良いでしょう。ただし、その際は将来的に車の運転ができなくなる可能性があること、実家を相続したときに相続税や維持費の負担が増えることを想定しておく必要があります。

賃貸を借りる

賃貸を借りるのも1つの方法です。ただし、熟年離婚後の高齢者が賃貸物件に住む場合、いくつかのデメリットがあります。まず、初期費用が数十万円ほどかかること、さらに、生涯にわたって家賃を支払う必要があることです。

また、高齢者は年齢制限や入居条件が厳しくなるケースが多いです。そのため、生活保護や公営住宅、高齢者向け優良賃貸住宅などの公的支援を利用する選択肢もあります。その場合は、入居可能かどうかを事前に確認することが重要です。

リースバックをする

リースバックとは、自宅を売却して資金を得た後も、そのまま同じ家に住み続けられる仕組みです。この方法を利用すると、持ち家を売却して得た資金を生活費に充てつつ、引き続き慣れ親しんだ家に住み続けることができます。しかし、リースバックにはいくつかの注意点があります。

まず、リースバックを利用する際には売却価格が市場価格よりも低く設定されることが多いため、期待するほどの売却益が得られない可能性がある点です。

また、家賃の設定が高めになる場合があり、長期的には負担が増えることも考慮する必要があります。さらに、契約期間が終了した際に再契約ができない場合もあり、その際は引っ越しを余儀なくされるリスクがあります。

そのため、リースバックを検討する場合は、リースバックを取り扱う不動産会社に相談し、契約条件や家賃の設定、将来のリスクについて十分に確認することが重要です。

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入れる施設を調べておく

熟年離婚後の生活スタイルとして、特別養護老人ホームや有料老人ホームを選ぶ人もいます。そういった施設での暮らしを望む場合は、事前に入居可能な施設を調べておくことが重要です。

入居金が数百万円必要な施設もありますが、地方では費用が安い場所もあります。費用相場としては月に6万~15万円程度です。

施設によっては入居待ちになったり、要件を満たせず入居自体が難しい場合もあるため、早めに選択肢を確認しておきましょう。

活用できる制度を調べておく

離婚後の経済状況や介護の不安に対して、適切な支援制度を知っておくことも重要です。熟年離婚後に活用できる制度として、最低限押さえておきたいのは以下の2つです。

  • 生活保護制度

パート収入を維持できなくなった際、年金分割の収入だけで生活していくのは難しいでしょう。そのようなときは、生活保護制度を利用できるか検討してみましょう。

年金収入があっても国の保護基準(最低生活費)を満たさない場合は、生活保護の対象となります。保護基準から年金収入を引いた額が支給されるため、貴重な生活費になるでしょう。

  • 介護施設の利用

介護が必要になった場合、生活保護を受けながら入居できる施設も存在します。特に「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護医療院」といった公的施設では、「介護保険負担限度額認定証」を持つことで、食費や居住費の自己負担が軽減され、生活保護の支給範囲内で施設を利用できるのです。なお、住民税非課税世帯の人もこの認定証の対象となります。

まとめ

熟年離婚後の一人暮らしについて考えると、生活費をどう工面しようか不安になる人が多いと思います。しかし、そういった不安は、事前の準備や適切な支援制度の利用で軽減が可能です。仕事や住まい、介護施設の準備に加え、公的支援の確認など、必要な知識を身につけて安心したセカンドライフを目指しましょう。

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この記事を書いた人

二児を育てるママライター。親の介護、葬儀、相続を経験し、その苦労を知る。超高齢化社会のいま、自分と同じ経験をする人々を助けたいと考え、セカンドライフをサポートするWEBメディア「えんがわ」に参加。

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