親の介護を考えるとき、多くの方が直面するのが老人ホームの入居資金問題です。
老人ホームの費用は大きく分けて「入居一時金」と「月額費用」とがあり、相場は地域によって異なります。
そこで、一般的な相場や費用の捻出方法を知っておくことで、スムーズに親を入居させる準備ができるでしょう。
- 親の老人ホーム入居を検討している人
- 老人ホームの費用相場を知りたい人
- 老人ホームの入居資金をどうやって捻出するか悩んでいる人
本記事では、各地域の老人ホームにかかる費用の相場や、資金の作り方、さらにはリーズナブルな老人ホームの探し方について解説します。親を安心して施設に入居させるための参考にしてください。
老人ホームの入居資金はどれくらい?
老人ホームの入居資金は、どの地域のどのような施設に入居するかによって異なります。
そこで、ここでは入居資金の相場を施設の種類別・地域別に解説します。
施設ごとの費用
施設ごとの費用相場は以下の通りです。
施設の種類 | カテゴリー | 入居一時金の相場 | 月額費用相場 |
特別養護老人ホーム | 公的施設 | – | 数万円~14.5万円 |
ケアハウス | 30万円〜 | 8.4~13.9万円 | |
住宅型有料老人ホーム | 民間施設 | 60万円〜 | 8.7~19.2万円 |
介護付有料老人ホーム | 360万円〜 | 14.4~29.9万円 | |
サービス付き高齢者向け住宅 | 25万円〜 | 10.9~21万円 | |
グループホーム | 7万円〜 | 8.4~13.9万円 |
上記のように、老人ホームは大きく分けて、次の2つのカテゴリーに分類されます。
- 公的施設
公的施設は地方自治体などが運営する施設で、民間施設と比較して費用が低めです。ただし、施設を自由に選べなかったり、入居待ちが発生したりなど、競争率が高い点に注意が必要です。
- 民間施設
民間企業や法人が運営している施設です。一般的な設備が整った施設から、内装がラグジュアリーな高級志向の施設まで、さまざまなタイプがあります。
サービス内容は入居者の介護度や費用、認知症の有無などによってさまざまです。
なお、入居条件には要介護度、寝たきりか否か、認知症の有無、看取り対応の必要性などが含まれます。
このように、老人ホームには公的施設と民間施設の2つのカテゴリーがあり、それぞれ以下のように細かな種類があります。
特別養護老人ホーム
- 特徴
特別養護老人ホーム(特養)は公的施設に分類されており、入居時の一時金が不要です。
月額の利用料は、部屋のタイプに応じた賃料や食費、介護サービス費、日常生活費などで構成されています。
特養の入所条件は原則として65歳以上で、介護保険の要介護認定で「要介護3」以上の認定を受けた方が対象です。
ただし、特定疾病を持つ要介護3以上の方であれば、40〜64歳でも入所が可能です。
寝たきりの方など重度の要介護者も受け入れていますが、看護師が24時間常駐しているわけではないため、常に医療的ケアが必要な場合には入所が難しいことがあります。
また、感染症を持っている方のように、集団生活が難しいケースでも入所のハードルは上がります。
なお、特養は人気が高いため、希望するタイミングで入居ができないケースも多いので注意が必要です。以下に、部屋のタイプ別の居住費をご紹介します。
- 費用相場
タイプ | 月額費用の相場 |
多床室 | 25,000円〜 |
従来型個室 | 35,000円〜 |
ユニット型個室的多床室 | 50,000円〜 |
ユニット型個室 | 60,000円〜 |
※利用者負担段階が第4段階(一般・市区町村民税課税世帯)の場合
※上記の金額に加えて食費が発生します
ケアハウス
- 特徴
ケアハウスは、自宅での生活が困難な方が食事や洗濯などの生活支援サービスを受けながら生活できる施設です。
「軽費老人ホームC型」とも呼ばれ、助成制度があるため、低所得の高齢者も入居可能となっています。
入居対象は60歳以上で、身寄りがなく一人暮らしの方や、老衰によって身体機能が低下している方に適しているでしょう。
ケアハウスはさらに「自立型」と「介護型」に分けられ、一般型のケアハウスでは介護サービスが提供されない一方、介護型では施設内で介護サービスが提供されます。
なお、2008年からはA型とB型が順次ケアハウスに建て替えられることが制度として定められていることから、ケアハウスの数は増加し、利用も今後増えていく見込みです。
- 費用相場
入居一時金 | 30万円〜 |
月額費用 | 8.4~13.9万円 |
住宅型有料老人ホーム
- 特徴
住宅型有料老人ホームは、生活支援サービスが付いた高齢者向けの施設で、バリアフリー設計により高齢者が安心して暮らせる環境が整っています。
入居者は生活援助や外部の介護サービスを自由に組み合わせ、自分のペースで生活でき、在宅介護で利用していたサービスも継続可能です。
基本的には自立した方から軽度の要介護者までが対象ですが、施設によっては要介護度が高い方や60歳未満でも入居できる場合があります。
医療体制は施設により異なり、入居条件も個別に定められているため、事前確認が必要です。
- 費用
入居一時金 | 67万円〜 |
月額費用 | 8.7~19.2万円 |
介護付有料老人ホーム
- 特徴
介護付き有料老人ホームは、有料老人ホームの一種で、行政から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。
ここでは、食事や入浴、排泄といった日常的な介護サービスに加え、レクリエーションや設備も充実しており、要介護者にとって安心して暮らせる環境が整っています。
なお、介護付き有料老人ホームは、主に以下の3つの形態に分かれています。
⑴介護専用型
要介護1以上の方を対象としており、重度の介護が必要な方でも快適に過ごせるよう設計されています。緊急時の対応力も高く、安心して生活できる環境が整っています。
⑵混合型
要介護認定を受けていない方でも入居可能で、自立している方と要介護の方が同じ施設内で生活可能です。
そのため、介護が必要な方と自立している方が混同した夫婦で、一緒に入居もできます。将来的に介護が必要になった場合も、そのまま継続して入居できるのが特徴です。
認知症の方の受け入れにも対応していますが、事前にケア内容を確認しておくと安心でしょう。
⑶自立型
自立型の施設は、介護専用型や混合型と比較すると施設数は少ないですが、居室や設備が充実しているため、費用が高めです。「今は自立した生活を送れるが、将来的には介護も検討している」という方に向いています。
- 費用
入居一時金 | 360万円〜 |
月額費用 | 14.4~29.9万円 |
介護付き有料老人ホームは特定施設の指定を受けているため、介護保険サービスを定額で利用でき、予算管理がしやすいのも大きなメリットです。
サービス付き高齢者向け住宅
- 特徴
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、バリアフリー仕様で高齢者が安心して暮らせる住まいです。
入居者は安否確認や生活相談のサービスを受けることができ、必要に応じて外部の介護サービスを利用できます。
そのため、現在は介護が不要でも、将来を見据えた備えとして利用を考える方に適しています。
また、サ高住には「一般型」と「介護型」の2種類があり、一般型は自立した高齢者を、介護型は介護が必要な方や認知症の方などが対象です。
入居条件は基本的に60歳以上の自立可能な高齢者ですが、要介護認定を受けている60歳未満の方も対象となります。
ただし、詳細な入居基準は施設によって異なり、「自立した生活が送れること」や「感染症にかかっていないこと」などが条件となる場合があります。
特に一般型は介護・医療ケアの体制が施設ごとに大きく異なるため、入居前にしっかりと確認が必要です。
- 費用
入居一時金 | 25万円〜 |
月額費用 | 10.9~21万円 |
グループホーム
- 特徴
グループホームは、認知症の方が専門スタッフの支援を受けながら共同生活を送り、自立を目指す施設です。
「認知症対応型共同生活介護施設」とも呼ばれ、脳に適度な刺激を与え、自宅に近い環境で生活することで、認知症の進行を緩やかにすることを目的としています。
近年、認知症の発症が増加しているため、グループホームの数も増えていますが、入居には厳しい条件があります。
入居条件には、65歳以上であること、要支援2または要介護1以上の認定を受けていること、認知症の診断を受けていること、集団生活に支障がないこと、そして施設が所在する市区町村に住民票があることが必要です。
65歳未満でも特定疾病を持っている場合は入居できることがありますが、重度の認知症や寝たきりの方は入居が難しい場合があります。そのため、希望する場合は事前に施設への確認が重要です。
- 費用
入居一時金 | 7万円〜 |
月額費用 | 8.4~13.9万円 |
地域ごとの費用
各地域ごとに、老人ホーム全体の費用の相場をまとめた表が以下の通りです。
老人ホーム入居資金の捻出手段3選
親を老人ホームに入居させる際、誰もが資金に余裕があるわけではありません。
そこで、ここでは老人ホームの入居資金を捻出する3つの手段を紹介します。
親の家の売却
親の施設入居を考えている子世代は、将来の生活や介護に関する親の希望を事前に話し合っておくことが重要です。
介護費用や住み替えに必要なお金の管理、通帳や印鑑の保管場所も確認しておきましょう。
特に、親が暮らしている家を売却して老人ホームの資金に充てる場合、親が認知症になった際には売却が困難になることがあるため、早めの準備が必要です。
リースバックによる資金の捻出
リースバックとは、自宅を売却し、その買い手と賃貸借契約を結ぶことで、引き続き自宅に住み続ける仕組みです。
よく「リバースモーゲージ」と混同されがちですが、リースバックでは自宅を売却することで得た資金に使途の制限がないため、老人ホームの入居資金として活用できます。
自治体や国の助成金
老人ホームを利用する方を対象に、支援制度を設けている自治体もあります。
例えば、神奈川県横浜市では、低所得者を対象に「施設居住費助成」として、介護保険施設のユニット型個室に入居した場合に月額約5,000円の助成を行っています。
また埼玉県川越市では、介護保険の自己負担額に対し、所得区分に応じて25%から50%の助成を行う制度があるのです。
お住まいの自治体でも同様の支援事業が行われていないか、ぜひ確認してみてください。
入居資金が抑えられる安い老人ホームの探し方
親の老人ホームへの入居を検討する際、費用は少しでも抑えたいものです。そこで、ここでは入居資金を抑えるための老人ホームの探し方を2つ紹介します。
要介護度や施設で複数箇所検討する
老人ホームの費用は、要介護度や施設の種類によって大きく異なります。同じ要介護度でも施設によって料金設定が異なるため、複数の施設を比較検討することが重要です。
例えば、特別養護老人ホーム(特養)や地域密着型施設など、比較的費用が低めの施設を選ぶことで、入居資金を抑えることが可能です。
また、要介護度が高い場合でも、利用可能な施設を広く探すことで、より費用を抑えた選択肢を見つけられます。
LIFULL介護で探す
老人ホームを探す際に便利なツールとして、「LIFULL介護」という検索サイトがあります。
こちらのサイトでは、地域や要介護度、費用などの条件を指定して、約57,000施設の中から希望に合った老人ホームを簡単に検索できます。
また、施設の詳細情報や口コミを確認できるため、安心して施設を選ぶことが可能です。 『LIFULL介護』を活用し、効率的に入居資金を抑えられる施設を見つけましょう。
まとめ
親の老人ホーム入居を検討する際、費用の把握と資金の準備は非常に重要です。
地域や施設の種類によって費用が大きく異なるため、複数の施設を比較検討し、最適な選択肢を見つけましょう。
また、資金の捻出方法としては、不動産の売却やリースバック、自治体の助成制度の活用をおすすめします。親が安心して老人ホームに入居できるよう、計画的に準備を進めましょう。