夫が亡くなった後、妻が家の売却を検討するケースは少なくありません。
夫と共に過ごした家には多くの思い出が残っていますが、生活費の問題や相続、心機一転したいという気持ちが重なり、売却を選ぶ方が一定数います。
しかし、家の売却は思い付きだけで進められるものではなく、相続税や譲渡所得税、売却のタイミング、そして不動産市場の変動など、考慮すべき点が多々あります。
- 夫の死後、生活費や相続を考えて家の売却を検討している方
- 家を手放すことに抵抗を感じつつも、新たな生活の場を探したい方
- 家の売却時に必要な税金対策や高く売るコツを知りたい方
そこで本記事では、夫の死後に家を売る方法について、必要な手順や税金対策、高く売るコツなどを解説します。
こうしたポイントを押さえることで、経済的な安定と新生活をより良い形でスタートするための参考にしてください。
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夫の死後に家を売る方法
夫の死後、妻が家を売るには以下の4つの手順を踏むのがおすすめです。
⑴相続登記をする
夫が亡くなったあと、家の名義変更が必要となり、相続登記を行わなければなりません。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に相続人へ名義を変更する手続きです。
法務局が自動的に名義変更することはなく、相続人が申請を行う必要があります。相続登記の方法は以下の2つです。
- 自分で申請書を作成し、法務局に申請する方法
- 司法書士などの専門家に依頼する方法
また、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。手続きを怠ると罰則が科せられる可能性があるため注意が必要です。
⑵相続財産を把握する
相続登記に伴い、夫が残したすべての財産を把握する必要があります。
財産には、家だけでなく預金や株式、保険なども含まれ、正確な財産評価は相続税の計算基準になるためです。
不正確な評価をすると法的トラブルに発展する可能性もあるため、必要に応じて税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
⑶不動産会社を選定する
家を売るには信頼できる不動産会社を選ぶことが重要です。
信頼性のある不動産会社の比較や評価を行っている一括査定サイトなどを活用し、安心して依頼できる不動産会社を見つけましょう。
⑷売却後のプランを立てる
家を売却した後の住まいや生活プランを計画する必要があります。
売却によって得た資金の運用、新しい住まい選びなど、生活の変化に備えた計画をしっかり立てることで、夫を失った後の新しい生活を安定させられます。
家族や友人、または専門家の協力を得ながら冷静に進めましょう。
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夫の死後に家を売ると税金はどうなる?
夫が亡くなり、妻が家を相続して売る際、相続時と売却時に異なる税金がかかります。各税金の詳細は以下の通りです。
相続時にかかる税金
相続が発生すると、「登録免許税」と「相続税」がかかります。
登録免許税
登録免許税は、相続登記を行う際に法務局に申請する際に印紙で納付するもので、固定資産税評価額の約0.4%が課税されます。
これは売買や贈与の場合の税率2%に比べて約5分の1と低く設定されています。
また、相続による所有権移転には不動産取得税はかからず、被相続人の地位をそのまま引き継ぐ性質があるため、不動産取得税の対象外です。
なお、相続登記を行わずに放置すると、不動産納税通知が亡くなった夫の名義のまま届いたり、夫と妻が並列で納税義務者とされるなどの不便が生じるため、早めに手続きを進めることをおすすめします。
相続税
相続税は、相続した財産が基礎控除額を超える場合に発生します。
基礎控除額以下であれば課税されませんが、基礎控除額を超えた場合、取得した財産に対して相続税がかかります。
相続税の計算は複雑であり、適用される税率や控除項目も多いため、専門家のサポートを受けることが望ましいです。
売却時にかかる税金
相続した家を売却する際は、「不動産譲渡所得税」がかかります。
この税金は、家の売却価格から、取得費(夫が購入した際の価格)や譲渡費用(仲介手数料や印紙代など)を差し引いた譲渡所得に対して課税されるものです。
なお、家を所有していた期間によって税率が異なります。売却年の1月1日時点で5年以上所有していれば「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15%、住民税5%です。
5年以下であれば「短期譲渡所得」として、所得税30%、住民税9%が適用されます。
さらに、復興特別所得税として、基準所得税額の2.1%も併せて申告・納付が必要です。
〜課税譲渡所得金額の計算方法〜
課税譲渡所得金額は以下の算式で計算されます。
譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(条件適用の場合)= 課税譲渡所得金額
取得費がわからない場合は、譲渡価額の5%を取得費として計算することも可能です。
また、マイホームを売却する際は最大3000万円の特別控除が適用され、課税譲渡所得を大きく減額することができます。
〜実際の税額例〜
例えば、夫が2900万円で取得した家を妻が相続し、3600万円で売却したとします。
この場合、譲渡所得は約700万円となり、長期譲渡所得として所得税と住民税の合計20%が課税されるため、約140万円の不動産譲渡所得税が発生します。
さらに、減価償却費や追加の譲渡費用があれば、その分の控除も可能です。
適用の可能性がある特例
妻が夫の不動産を相続し、その後に売る場合、以下の特例が適用される可能性があります。
居住用財産の売却の特例
夫と同居していた家を妻が相続し、その後も居住した上で売る場合、居住用財産の売却の特例が適用されることがあります。
通称「マイホーム売却の特例」とも呼ばれ、売却益のうち3000万円までが控除されるため、譲渡所得税が発生しないケースが多くなります。
被相続人の居住用財産売却の特例(空き家売却の特例)
夫の死亡後に相続した家が空き家となり、その後売る場合に利用できる特例です。
この特例では、相続した家屋の売却益から3000万円の特別控除が認められるため、譲渡所得税が軽減される可能性があります。
ただし、この特例は適用条件が厳しく、空き家であることや、被相続人が死亡した後3年以内に売るなどの要件があるため、適用を検討する際は専門家の確認が必要です。
これらの特例を活用することで、相続した家の売却にかかる税負担を軽減できます。
参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
夫の死後に家を高く売るコツ
夫の死後、妻が家をできるだけ高く売るためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。以下に具体的な注意点を挙げます。
相続に伴う諸経費を把握する
家を相続する際は、相続税や登記費用に加えて、固定資産税や都市計画税、さらに専門家への報酬が発生することがあります。
また、家の築年数が古い場合には、外壁や屋根の修繕費、水回りのリフォーム費用など、売却前の維持費が発生するケースもあるでしょう。
これらの費用を把握しておくことで、予想外の支出を避けて、売却利益の最大化を目指せます。
相続税対策をする
相続税の負担を軽減するためには、さまざまな特例や控除を活用することが効果的です。
たとえば、配偶者には「配偶者の税額軽減」や「3000万円特別控除」、さらに小規模宅地の特例など、適用できる税額軽減措置があります。また、生命保険金の非課税枠も活用可能です。
相続人が多い、財産が多いなど複雑なケースでは、税理士などの専門家に相談して節税対策を練ることも検討しましょう。
期限内に相続税を支納める
相続税の申告と納付は、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に行わなければなりません。
期限を過ぎると延滞税が発生し、余計な出費につながるため、計画的に手続きを進めて早めに納付することが重要です。
売る時期を見極める
家を高く売るには、市場の状況や季節を考慮する必要があります。
景気が良好で需要が高まっている時期には不動産価格も上昇傾向にあるため、景気の状況に合わせて売却を検討しましょう。
また、一般的に引っ越しシーズンである春や夏は不動産市場が活発化し、良い条件での売却が期待できます。
市場価格の相場を理解しておく
家を適正価格で売るためには、家の市場価値を正確に把握することが重要です。これにより、業者に安く買い叩かれたり、不当に低い価格で査定されるリスクを減らせます。
相場を確認するためには、まず国土交通省の「不動産取引価格情報検索」サイトや不動産流通機構が運営する「レインズマーケットインフォメーション」などで過去の成約事例を調べ、周辺エリアの価格動向を理解しましょう。
これにより、査定額が相場に対して適正かどうかを自分で判断できます。
また、複数の不動産会社から査定を受け、提示された価格を比較することで、どの業者が信頼できるかを見極めやすくなります。
こうした事前準備を行うことで、業者に左右されず、自信を持って取引を進められるでしょう。
夫の死後に家を売る理由あるある
夫が亡くなった後、残された妻が家を売る理由にはさまざまな事情があります。以下に代表的な理由を挙げます。
生活費が足りないから
夫が一家の収入源であった場合、夫の死後に生活費の確保が大きな課題となります。
家を売れば、まとまった資金を得て生活費や教育費に充てることができ、生活の質を維持することが可能です。また、売却によって得た資金は、将来の不安を和らげるための備えにもなります。
平等に分けて相続する必要があるから
夫が亡くなった際、複数の相続人がいる場合は相続の問題が発生します。
家のような不動産は分割しにくいため、家を売却して現金化し、その収益を各相続人に分配することで公平な相続が可能となります。
心機一転したいから
夫との思い出が詰まった家に住み続けることが精神的な負担になる場合もあります。
新しい環境に移ることで、気持ちをリセットし、前向きな生活を始めるきっかけになることもあるでしょう。
たとえば、都市部への移住やマンションへの引っ越しなど、売却資金を活用して新しいライフスタイルを築く道もあります。
まとめ
家を売却することに対して、「夫に悪いのではないか」と罪悪感を抱く方もいるかもしれません。
しかし、夫の死後に家を売ることは、生活の再建や新たなスタートを切るための有力な選択肢です。
当記事でお伝えしたように、家の売却には相続手続きや税金、売却価格を左右するタイミング、市場の動向といった複雑な要素が絡むため、慎重な準備が求められます。
また、家を高く売るためには、不動産会社選びや維持費の把握、適用可能な税制の特例など、さまざまな視点から計画を立てることが重要です。
これらのポイントを押さえることで、経済的な負担を減らしつつ、家の売却を成功させましょう。
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