大事な人が夜中に病院で亡くなったら、どうすればいいの?
この記事では、そんな突然の別れに直面したときのために、葬儀までの手順をわかりやすく解説します。また、ご遺体を病院から搬送する費用も紹介するので、参考にしてください。
夜中に病院で亡くなったら?葬儀までの流れ
大事な人が夜中に病院で亡くなったら、心が乱れるのが普通です。しかし、遺族にはその後にやるべきことが山ほど残っています。そこでここでは、故人が亡くなってから葬儀までの一連の流れを解説します。
ご臨終
病院でのご逝去が確認されると、医師から正式な死亡宣告がなされ、その後死亡診断書が発行されます。死亡診断書の発行は無料ではなく、3,000円から20,000円の範囲で費用が発生するのが一般的です。
この診断書は、後の手続きである公的年金の請求などで必要とされる重要な書類です。その後の手続きをスムーズにおこなうためにも、複数のコピーを取っておくことをオススメします。
末期の水
末期の水、別名「死に水」とも呼ばれる儀式は、故人が安らかにこの世を去ることを願い、おこなわれます。この習慣には「故人の喉を潤し、平穏な旅立ちを祈る」という意味のほか、複数の願いが込められています。
過去には、医療技術が未発達だった時代に、口に水を含ませて喉仏の動きを確認することで生存を判定する目的でも用いられました。ただし現代においては、直接口の中に水を含ませる必要はなく、唇に軽く水分を与える程度でおこなうのが一般的です。
エンゼルケア
エンゼルケアは、看護師が故人の遺体に施す死後のケアのことを指します。元々は医療的な処置、たとえば点滴の除去や傷口の処理などが中心でしたが、現在では故人の尊厳を尊重し、生前の姿にできるだけ近づけることに重きを置く傾向があります。
エンゼルケアの内容は病院によって異なりますが、一般的な項目は以下の通りです。
医療処置:医療器具の取り外し、気管切開部分の縫合、点滴跡のカバーなど。
清拭:お湯やアルコールで全身を清潔に拭きます。一部の病院では、シャンプーを含む更に詳細なケアを施す場合もあります。
更衣:故人に新しい衣服を着せ、身なりを整えます。
死化粧:故人の髪を整え、必要に応じて髭を剃り、顔色を良く見せるための軽いメイクを施します。
死亡診断書を受け取る
病院でのご逝去の際、葬儀や火葬の手続きを進めるためには、医師によって発行される「死亡診断書」の受け取りが必要です。この診断書には死亡の事実と死因が記載されており、役所への死亡届提出にも使用されます。重要な書類なので、紛失しないようにしましょう。
また、病院での死亡といえども、医師が死因について不審な点を感じた場合は、警察の介入と検視がおこなわれることがあります。このような状況では、通常の死亡診断書ではなく「死体検案書」が発行されることになります。死体検案書も、死亡診断書同様に、葬儀や火葬の手続きに必要となる公的な書類です。
葬儀社に連絡
ご逝去が確認されたら、速やかに葬儀社への連絡をおこなう必要があります。もし事前に葬儀社が決まっていなければ、この段階で迅速に選定しなければなりません。
病院側からの紹介を受けることも可能ですが、その際は葬儀社の提案するプランや費用について冷静に判断することが重要です。気が動転している状態で、提示された内容にそのまま同意してしまうと、後で「不要なサービスに費用を支払った」と後悔することがあります。葬儀は遺族の意向を反映し、故人にとって最適な形でおこなうべきですので、可能であれば事前に葬儀社をリサーチし、決定しておくことが望ましいです。
ご遺体の搬送
ご遺体の搬送は、技術的にも精神的にも家族にとって負担が大きいため、専門の葬儀社に依頼するのが一般的です。法律上は遺族が自家用車で搬送することも可能ですが、死後硬直が始まったご遺体を扱うことは容易ではありません。また、悲しみの中での運転は安全上のリスクも伴います。
その点、葬儀社の寝台車を利用することで、適切にかつ安全にご遺体を搬送できます。もし事前に葬儀社を決定していない場合、病院から推薦される葬儀社に搬送を依頼できますが、その際は「とりあえずの搬送のみ」という希望を伝えることが重要です。
よくわからずに提案されるがままに依頼すると、不要なサービスまで依頼する可能性があります。
親族へ訃報連絡
故人の訃報は、葬儀の具体的な日程や場所が決定していない場合でも、親族に対して速やかに伝えるべきです。これにより、遠方に住む親族が移動の準備を始める時間を確保できるだけでなく、高齢者など参列が難しいとされる親族も、参加するかどうか検討しやすくなります。
もし家族葬を予定しているのであれば、その旨を初めから明確に伝えておくことが望ましいでしょう。
病院を出発・安置
ご遺体を病院の裏口から寝台車に乗せた後、病院スタッフへの挨拶を経て、安置場所へ向けて出発します。この際、死亡診断書を持参している人が必ず寝台車に同乗することが重要です。
安置先として選択できる場所は多岐にわたりますが、主に以下が候補となります。
- 斎場の遺体安置室
- 葬儀社の遺体安置室
- 火葬場の霊安室
- 民間の遺体安置施設
安置が完了すると、お通夜までの期間は一般的に枕飾りが設けられます。これは、故人の枕元に祭壇や供え物を配する伝統的な習わしですが、正式な葬儀やお通夜で使用される祭壇とは異なる点に注意が必要です。
保冷設備を備えた施設ではご遺体の適切な管理が可能ですが、訪問時間が制限されていたり、場合によっては面会自体が難しい場合もあったりするため、事前に確認しておくことが重要です。
葬儀社と打ち合わせ
葬儀社との打ち合わせでは、葬儀の具体的な計画を立てます。この段階で決定する内容には以下のものが含まれます。
- 葬儀の日程と場所の確定
- 葬儀の形式(家族葬、一般葬など)
- 故人の信仰していた宗教や宗派
- 参加予定の参列者数
- 喪主や施主の選定
- 祭壇や棺の選択、料理や返礼品などのプラン
- 受付やその他サポートを担当する人員
- 支払い方法の確認
故人がどの宗教や宗派に属していたかによって、葬儀の内容が大きく異なるため、葬儀社がその宗教や宗派に対応しているか事前に確認が必要です。
対応していない場合、故人や遺族の希望に沿った葬儀をおこなえなくなる恐れがあります。そのため、葬儀社を選定する際は、事前に対応可能な宗教や宗派を把握しておくことが重要です。
納棺
納棺とは、故人を棺に安置する儀式のことです。この儀式は通常、お通夜の前におこなわれ、次の手順で進められます。
⑴末期の水
故人の口に水を含ませ、旅立ちを潤すという意味が込められています。これはエンゼルケアの一環としておこなわれることがあり、安置場所に遺体を運んだ後にも改めておこなわれることが一般的です。
⑵湯灌(ゆかん)
故人の体を清める宗教的な儀式で、清拭とは異なります。専門的な知識を持った湯灌師や納棺師によっておこなわれることが多くなっています。
⑶死化粧
故人の顔色を整えたり、髪を整えたりすることで、生前に近い姿を再現します。
⑷死装束
仏式の場合は白装束を用いますが、宗教や宗派によって異なる場合があります。故人を棺に納め、副葬品を入れ、棺の蓋を閉じます。
なお、仏式においては、僧侶が仏様の教えに基づき、供養と説法をおこないます。神式の場合は、帰幽報告の儀や枕直しの儀をおこない、棺に褥を敷いて故人を納めた後、白布で覆います。そして、祭壇にご遺体を安置し、手水の儀を経て、全員で拝礼するのが通例です。
また、キリスト式では神父や牧師が立ち会い、祈りを捧げ、讃美歌を斉唱し、聖書を朗読することで故人を弔います。
通夜と告別式
通夜は、かつては故人と親しい近親者のみでおこなわれるものでしたが、今日では葬儀や告別式に出席できない人が参列する機会ともなっています。
葬儀は家族や近親者が中心であり、通夜は友人や職場の関係者などより広範な参列者を迎えるのが一般的です。翌日には葬儀と告別式が執りおこなわれ、故人の冥福を祈り、最後のお別れをします。
火葬
火葬は、葬儀や告別式の後に火葬場でおこなわれるプロセスで、故人の遺体を火葬炉で焼却し、灰にします。通常、火葬には家族や近い親族だけが立ち会いますが、特別な事情がある場合は、他の参列者が同行することも可能です。火葬が終わると、遺骨を拾い、後日、埋葬や納骨をおこないます。
病院から遺体を搬送するにはいくらかかる?
故人を病院から安置場所へ搬送する際の費用は、様々な要因で変わります。そこでここでは、搬送費用の相場と、費用を抑えるためのポイントを解説します。予期せぬ高額な費用に悩まされないようにしっかり押さえておきましょう。
病院から遺体を搬送する費用
病院からご遺体を搬送する基本費用は、搬送距離によって変動します。一般的に、10kmまでは12,000円から20,000円が目安であり、その後は10kmごとに3,000円から5,000円が加算されることが多いです。
付帯品にかかる費用
搬送時に必要な棺や防水シーツ、ドライアイスなどの付帯品によって、追加で3万円から5万円程度の費用が発生します。これらは搬送を安全かつ適切におこなうために重要な要素です。
近距離搬送の費用
近距離であれば、葬儀社のプランに搬送料が含まれている場合もあり、追加の搬送料が不要になることがあります。多くの葬儀社では、50km以内を近距離と設定していることが多いです。
中距離・遠距離搬送の割増料金
100kmを超える中距離や遠距離の搬送では、夜間や早朝の移動、雪道での走行、高速道路利用などにより割増料金が適用される場合があります。特に500kmを超える遠距離では、高速道路利用や海を越える必要がある場合に、船舶や飛行機の利用による追加料金が発生します。
「夜中に病院で亡くなったら?」に関連してよくある質問
ここでは、「夜中に病院で亡くなったらどうする?」という質問に関連して、よくある質問に回答します。
夜中に病院で亡くなったら故人と家に帰れる?
故人を病院から自宅に戻すことは法的に制限されておらず、家族が望めば搬送が可能です。しかし、住環境によっては自宅での安置が難しい事情があります。
たとえば、集合住宅でエレベーターがない、または故人を運ぶためのストレッチャーが入らない、他の住民の同意が得られない、または適切な安置スペースが確保できないなどです。こうした理由から、故人を直接葬儀場などの専門の安置場所に搬送する家族が多い傾向にあります。
夜中に病院で亡くなった際の葬儀社への連絡タイミングは?
夜中に病院で故人が亡くなった場合でも、葬儀社への連絡は遠慮せずすぐにおこなうべきです。多くの葬儀社は24時間体制で対応しており、いつでも連絡を受け付けています。早急に安置場所の確保や搬送の手配が必要になるため、速やかに葬儀社へ連絡しましょう。
病院にはどれくらいの時間(期間)遺体を置いておける?
病院での遺体安置期間は通常2~3時間と非常に短く、病院によっては霊安室が設置されていない場合もあるため、遺族は迅速に安置場所と搬送方法を決定する必要があります。霊安室の使用可能時間も病院により異なるため、事前の確認が必要です。
病院で亡くなった際の故人の服装は?
病院で亡くなった際の故人の服装については、看護師がエンゼルケアの一環として着替えをおこなう場合が多く、その際には病院が用意した浴衣が使用されます。
遺族が故人に特定の衣装を着せたい場合は、病院の方針により受け入れてもらえることがあるので、事前に確認が必要です。
病院から紹介された葬儀社は断って大丈夫?
病院から紹介された葬儀社を断ることに問題はありません。既に別の葬儀社を決めている場合や、複数の葬儀社を比較検討したい場合は、その旨を病院側に伝えましょう。
病院からの紹介はあくまで一つの選択肢であり、遺族が最終的にどの葬儀社に依頼するかを決める権利があります。また、状況によっては、病院から出るために搬送のみを依頼することも可能です。
夜中に病院で亡くなったら慌てないように葬儀社を決めておく
愛する人が夜中に病院で亡くなったら、葬儀までの限られた時間内に多くの決断を下す必要があります。
特に、故人の遺体を安置する場所の決定と、その後の搬送は迅速におこなわなければなりません。多くの病院では霊安室の利用時間が限られているため、遺族は短期間で安置場所を決定し、葬儀社に搬送を依頼する必要があります。
そのため、多くのご家族は病院の紹介に頼りがちで、後から「満足する葬儀をできなかった」と感じるケースが少なくありません。故人の意向を尊重し、遺族が満足する葬儀をおこなうためには、事前に搬送方法や葬儀場所、葬儀社を検討し、決定しておくことが重要です。
葬儀までの流れについてのまとめ
夜中に病院で突然亡くなってしまった場合、遺族は突然の決断を迫られることが多いです。いざというときに慌てないためには、事前に葬儀社を選定し、必要な手続きや流れを理解しておくことが重要です。いつか来るその日のために、当記事の内容が少しでもお役に立てることを祈っております。