一人暮らしの女性が増加する中、老後の生活や死後の手続きに備える「終活」が注目されています。配偶者や子どもがいない場合や疎遠な場合など、それぞれの状況に応じた対策が必要です。
そこでこの記事では、一人暮らしの女性が終活を始めるべき理由や具体的な取り組みについて解説します。
- 女性の一人暮らしであり、誰かと暮らす予定がない
- 生活費、住まい、介護など、一人暮らしの将来が不安…
- 子供を頼っていいのかどうかわからない
一人暮らしの女性が終活をした方がいい理由
子供がいない場合、子供はいるが疎遠な場合、子供がいる場合、以上の3つの状況別に、一人暮らしの女性が終活をした方がいい理由を紹介します。
子供がいない場合
配偶者や子どもがいない一人暮らしの女性は、できるだけ前倒しで終活を始めることをオススメします。老後生活のサポートや死後の手続きなどをお願いできる相手が、身近にいないためです。
通常であれば、これらのサポートは子どもが担うことが多いですが、子どもがいない場合は兄弟や甥・姪といった親族に頼るしかありません。
しかし、老後のサポートや死後の手続きは負担が大きいです。関係性がそこまで深くない親族に迷惑をかけるのは避けたいと考える人も多いでしょう。だからこそ、元気なうちに終活を始めておくことが重要です。
子供はいるが疎遠な場合
子どもがいる一人暮らしの女性でも、早めに終活の準備を進めておくことをオススメします。子どもがいたとしても、海外や遠方に住んでいたり、疎遠であったりして頼れないケースもあるでしょう。
特に子供が遠方で暮らしている場合、一緒に暮らして生活を支援してもらったり、財産管理を任せたりするのは難しいことが多いです。
だからこそ、最初からサポートはないものとして、自分自身で老後の計画を立てる必要があります。
子供がいる場合
子どもがいて疎遠ではない一人暮らしの女性でも、終活を早めに始めることは重要です。
たとえ子どもと良好な関係を保っていたとしても、将来的に子どもが自分の家庭や仕事で忙しくなり、親のサポートが難しくなる可能性があります。
特に、親の介護や死後の手続きは大きな負担となるため、子どもたちに過度な負担をかけないためにも、終活を計画的に進めることが大切です。
一人暮らしの女性が終活をしないとどうなるか
終活をしていない一人暮らしの女性が亡くなると、さまざまな問題が発生する可能性があります。ここでは代表的な問題をいくつか紹介します。
緊急時の発見の遅れや孤独死のリスク
一人暮らしの女性が急病になった場合、周囲の人が気づくのに遅れることが多く、孤独死のリスクが高まります。日常的に安否を確認してくれる人がいないと、異変に気づくのが遅れる可能性が高いです。
なお、一般社団法人日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会の調査によれば、孤独死をする人の平均年齢は男性が62.1歳、女性が61.2歳となっています。やはり、高齢者ほど孤独死のリスクは高まるとみていいでしょう。
死後の契約解約手続きが未処理になる
一人暮らしの女性が亡くなると、電気やガス、水道などの各種契約の解約手続きが滞る恐れがあります。通常は親族がおこないますが、これらの手続きが未処理のままになると、利用していないにもかかわらず費用が発生し続けることになります。
希望通りの葬儀がおこなわれない可能性
身寄りのない一人暮らしの女性が亡くなった場合、自分の希望する葬儀がおこなわれない可能性があります。具体的には、自治体が簡素な葬儀をおこない、遺骨は無縁墓地に納められるなどです。
親族に負担をかけるリスク
本人は親族に頼るつもりがなくても、実際には疎遠な親族に負担をかける可能性があります。警察が遺族を調査し、連絡が可能な場合、遺体の処理や清掃費用などが親族に請求されることがあるのです。
財産が国に渡る可能性
法定相続人がいない場合、亡くなった人の財産はすべて国(国庫)に納められます。なお、法務省の発表によれば、相続人のいない国庫帰属相続財産の総額は、2022年どに過去最高額である768億9千万円でした。
一人暮らしの女性が終活でやっておきたいこと
一人暮らしの女性が終活でやっておきたいことの中でも、特に優先度の高いものをいくつか紹介します。
人間関係について
一人暮らしの女性にとって、人間関係の広がりは心の支えとなります。特に高齢になると、周囲のサポートが欠かせません。そこで、積極的に交流の場に出向き、助け合える関係を築いておくことが重要です。
友人や知人を増やし、いざというときに頼れる人を確保しましょう。自分もまた、相手が困ったときには手を差し伸べることで、互いに支え合える関係を築けます。
日常の生活圏を広げ、趣味のサークルや地域の活動に参加するなどして、新しい人との出会いを積極的に求めてみてください。世代を超えた交流ができる場であれば、若い世代とのつながりも生まれ、幅広い人間関係がつくれるでしょう。
お金の管理について
一人暮らしの女性は、早めに老後の資金対策を考えることが重要です。
女性は男性と比較して平均的な収入が低いため、年金の支給額も少ない傾向にあります。国税庁のデータ(令和4年度)によれば、男性の平均年収が563万円であるのに対し、女性は314万円となっています。
これに伴い、厚生年金保険の支給額も男性の平均月額が約16.5万円であるのに対し、女性は約10.3万円と、約6割にとどまります。
また、高齢者単身無職世帯が必要とする1ヵ月あたりの生活費は約15.5万円であり、女性の場合、年金収入だけでは生活が難しい場合があります。単身女性の場合、配偶者の収入や遺族年金に頼ることもできません。
そのため、老後資金の確保は早期から計画的に進めることが大切です。金融機関やファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談し、適切な対策をしましょう。
医療や介護について
介護や終末医療に関する希望を明確にしておくことは、一人暮らしの女性にとって重要な終活の1つです。
どこで、誰に介護をしてもらいたいか、延命治療を希望するかどうかなど、具体的な希望を明示しておくことで、家族や介護者が適切な対応をしやすくなります。例えば、以下のような事項を事前に決めて記録しておくと良いでしょう。
介護の場所:自宅での介護を希望するのか、施設に入所するのか。
介護者:家族や友人に依頼するのか、専門の介護サービスを利用するのか。
医療措置:病気や怪我の際にどのような治療を望むのか。
延命治療:延命治療を希望するか、それとも自然な形での看取りを望むか。
これらの希望は、エンディングノートや遺言書に記載することが可能です。家族や信頼できる友人、担当医師にも伝えておくと、緊急時にスムーズに対応してもらえます。
相続や葬儀について
一人暮らしの女性が終活をする際には、エンディングノートの作成が重要です。家族と死後のことを話す機会が少ない場合でも、エンディングノートに詳細を書き残しておけば、残された家族が困らないようにできます。
なお、エンディングノートには、以下の情報を記入しておくと良いでしょう。
- 基本情報(氏名、本籍地など)
- 医療や介護に関する希望
- 葬儀やお墓の希望
- 死後に連絡してほしい人の連絡先
- 遺言書の保管場所
エンディングノートを作成したら、その存在と保管場所を信頼できる家族や友人に伝えておくことが重要です。
防犯について
一人暮らしの女性は、防犯対策をしっかりとおこなうことが重要です。高齢者は抵抗力が低く、財産を持っていることから、犯罪のターゲットにされやすいためです。
実際、家に人がいるときに侵入する「居空き」や、誰もいないときに侵入する「空き巣」の被害は、65歳以上の単独世帯が25%以上を占めています。
高齢女性の一人暮らしは、特に狙われやすいため、万全の防犯対策が必要です。具体的には、以下のような対策をオススメします。
賃貸物件の場合:オートロックや管理人常駐の物件を選ぶ。
一戸建て住宅の場合:窓に防犯フィルムを貼る、ホームセキュリティシステムを導入する。
また、近隣住民との交流を深め、異変があったときに気づいてもらえるようにすることも大事です。防犯意識を高め、対策を徹底することで、安全に暮らせる環境を整えましょう。
断捨離について
一人暮らしの女性は、体力があるうちに大型家具などの断捨離を進めることも大切です。年齢とともに体力や筋力は低下しますし、特に女性はその傾向が顕著だからです。
大きな粗大ごみを処分するには相応の筋力が必要で、下手をすると骨折などの重大なケガをする可能性もあります。また、大地震などの災害時には、倒れた家具の下敷きになるリスクもあるでしょう。
すでに体力に自信がない場合は、不用品回収業者に依頼するのも一つの方法です。ただし、悪質な業者も存在するため、業者選びは慎重におこないましょう。認可の有無や口コミを確認することが大切です。
一人暮らしの女性の終活に関してよくある質問
一人暮らしの女性が終活を進める際に直面する疑問や不安に関して、よくある質問とその回答を紹介します。
一人暮らしの高齢女性ってどれくらいいるの?
高齢者の一人暮らしは増加傾向にあり、その数は今後も増えると予想されています。総務省の調査によれば、令和2年には一人暮らしの高齢者が男性約231万人、女性約441万人となっており、女性の方が圧倒的に多いです。
特に80歳以上では、男性54万世帯に対し、女性は194万世帯と大きな差があり、夫との死別が主な原因となっています。たとえいま一人暮らしでなくても、今後そうなる可能性は十分にあるので、将来のための備えが重要です。
参考:「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調 結果」(総務省)
自分の死後にペットはどうなるの?
一人暮らしの女性がペットを飼っている場合、自分の死後にペットはどうなるのか不安に思われるかもしれません。そのため、自分の死後にペットを引き取ってくれる新しい飼い主を見つけることも終活の1つと言えます。
新しい飼い主として適任なのは、動物を育てた経験のある友人や近隣の人がいいでしょう。飼い主が見つからない場合、インターネットで里親を募集する方法もあります。引き取り手が決まったら、引き渡す場所やタイミングなど、具体的な詳細を事前に話し合っておきましょう。
まとめ
一人暮らしの女性が終活をする理由は、老後のサポートや死後の手続きを円滑に進めるためです。特に、子どもがいない場合や疎遠である場合、自分自身で積極的に準備を進める必要があります。
また子どもがいる場合も、過度な負担をかけないために、財産整理や介護や葬儀の希望などを明確にしておくことが重要です。エンディングノートや遺言書などを活用し、安心して老後を迎えましょう。